ビフテキ考

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ひと昔前は、ビーフステーキを『ビフテキ』といっていたが、今ではほとんど聞かなくなった。
いまでこそレストランや専門店で数百円から食べられるようになったが、昔は安くても5000円はする代物であった。
そして、高いだけあって美味しかった、今のように外国産の安い牛肉が流通していなかったこともあり、まず、国産牛肉であったことは間違いない。
高級な西洋料理の代表格でもあり、一般の人々は、そう滅多に食べられないものであったと記憶している。

ステーキは肉の味をしっかり楽しみたいからミディアムが良い。
味付けはステーキソースや、その他のソースをかけるより、塩・コショウのみで食べるのが一番おいしい。
さらに日本人ならではの食べ方として、ワサビ醤油もまたオツなものである。
ワサビを醤油に溶いてはダメだ、ワサビを少量肉の上にのせ、小皿にいれた醤油にちょっと付けて食べる。
ワサビの風味が肉の旨味を引き出し、何とも言えぬ上品な味を堪能できる。
ソースによって肉の味を凌駕され、肉そのものの味を邪魔されることなく楽しめる。

牛肉はやっぱり和牛が良い、黒毛和種の肉が最高だと思う。
よく巷では、アンガス種の肉を売りにしている文言を目にするが、大して美味しいとは思えないし、旨味もなく、日本人の味覚にはあまり合わないのではないだろうか。

ビフテキという言葉は死語になってしまったが、ビーフステーキに親しみを込めた、まるで「おやじさん」とでも言っているような響きもまた愛嬌があってほっこりする。

しかし、今でも思い出されるのは、アメリカはロサンゼルスのホテルにあった、今はなき幻のレストランで食べたビフテキである。
厚くて、大きくて、柔らかく、旨味があり、適度に赤身に脂が入っているジューシーであった。
今はなきあの店の肉の味は生涯忘れられないだろう。

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