中国の漢方医

初めて中国を訪れたのは、今から25年ほど前になるだろうか、まだ自動車より自転車やバイクが圧倒的に道路を占有していた時代である。
その後も3回ほど訪中した。

北京は故宮、皇帝の陵墓、天壇公園、旧清皇帝の御典医であった同仁堂などを巡ったが、私の中で何が一番驚いたか、それは同仁堂であった。
まだ頻繁に停電が発生する中国で、北京郊外明や清の皇帝陵の途中だったと記憶しているが、殺風景な建物(日本の中小企業の建屋のような)へと案内された。
薄暗い照明が突然消え、真っ暗な廊下を進んで20畳ぐらいありそうな、学校の理科実験室のような部屋に通された。
暫くするとネイティブな日本語を話す若い女性と、白髪の初老の威厳のある男性が入ってきた。
この男性、つまり漢方医なのが、この方もまた日本語は堪能で、流暢な日本語を話していた。
てっきり日本人ではないかと思うほどであった。

先生は両手の手首の脈を取り、暫くするとおもむろに「中性脂肪が高いね。血液がドロドロだ、このままじゃ長生きできないね。いい薬があるから後で紹介しますよ」と言われた。
ただ、若かった私は健康に自信があり、「何言ってんだこの爺は、薬を売りつけたいだけだろう」と内心思っていたのだが、この後驚愕する事態になる。

紹介された薬、つまり私だけの漢方薬を調合していただき、それを7千円で購入したのだが、もちろんこの時点では半信半疑だ。
「終わったらここに連絡もらえれば送ることも出来るし、日本にも同仁堂の支店があるから、そこでも買うことができる」と教えられた。

帰国して2ヶ月後、健康診断を受けると、血液検査で初めて引っ掛かった、それは同仁堂の先生に言われたことと全く同じことだった。
寸分違わぬ同じことを指摘されたのだ。
たった数分間脈をとっただけである。

漢方の真髄に触れた。
中国の奥深さを知った。

流石は皇帝の御典医である。
東洋医学の素晴らしさと神秘に触れた。

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